シネマ執事

ティッシュみたいだね 映画って

佐々木 隆行
佐々木隆行(ささきたかゆき)

1969年生まれ。広島県出身。青山学院大学中退。IT企業勤務。
最初の映画体験は「東映まんがまつり」。仮面ライダーがヒーローだった。ある年、今回は「東宝チャンピオンまつり」に行こうと一旦は決意したものの、広島宝塚へ歩く途中に建っていた広島東映「東映まんがまつり」の楽し気な看板を裏切ることが出来なかったことを痛切に覚えている。
佐々木 隆行の記事一覧
是枝裕和監督 「三度目の殺人」 2017 レビュー

是枝裕和監督 「三度目の殺人」 2017 レビュー

司法運営の是非  下打ち合わせ。根回し。一般の会社でもそうだ。会議でいきなり、ガチンコの議論はしない。そのほうが合意形成しやすいからだ。容疑者である役所広司は、幾度も証言を翻す。被害者の娘である広瀬すずは、裁判の方向性に合わない事実を告白する。しかし、弁護士(福山雅治)には、真実の希求など全く念頭にない。減刑を少しでも...
根岸吉太郎監督 「ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜」 2009 レビュー

根岸吉太郎監督 「ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜」 2009 レビュー

戦後のリセット  戦争が終わり、兵役を解かれた男たちは、肉体労働に汗を流した。疲れた身体は、酒という刺激を欲する。映画の舞台となる居酒屋「椿屋」には、そんな男どもが集まってくる。「椿屋」が店を構えるのは中野、おそらくはサンモールの東側だろう。この界隈には現在も小さな飲み屋がひしめき合っている。  ゴチャゴチャと小汚い建...
山田洋次監督 「男はつらいよ お帰り寅さん」 2019 レビュー

山田洋次監督 「男はつらいよ お帰り寅さん」 2019 レビュー

堂々たる新作  裏切られた。これはノスタルジーではない。シリーズの名シーンがインサートされ、亡き寅さんを皆で懐かしがる代物だと思っていた。確かに懐かしんではいる。インサートシーンも多い。しかし、「男はつらいよ お帰り寅さん」は、「男はつらいよ」シリーズの予定調和をなぞらない、2019年バリバリ新作の日本映画だった。  ...
市川崑監督 「病院坂の首縊りの家」 1979 レビュー

市川崑監督 「病院坂の首縊りの家」 1979 レビュー

横暴で短絡的な男  病院坂の勾配は鋭い。遠くから観るとほとんど直角であるかのようだ。この坂を人力車が登る。周囲に緑はなく、色彩は灰色と薄茶色のみ。「病院坂の首縊りの家」は淡い色彩と鋭い構図の映画である。  オープニングのタイトルバックは、ジャズバンドの演奏シーンだ。舞台は1951年、架空の町である吉野市は、関西の盆地に...
朝が来る

河瀬直美監督 「朝が来る」 2020 レビュー

永作博美の笑顔  永作博美の少し横長い顔。人懐っこい笑顔は、若い頃と変わらない。誠実に人に向き合い、自分にもポジティブだ。企まざるユーモアが、愛らしい笑顔いっぱいに拡がる。とびきりの美人ではないかもしれないが、女らしい色香はすこぶる魅力的だ。そんな永作の化粧っ気のない顔が、幾度もアップで映される。年輪を経た笑顔は慈愛に...
吾輩は猫である

市川崑監督 「吾輩は猫である」 1975 レビュー

俗物のおしゃべり 俗物とは、世間に漂う人だ。自らの信念を持たず、常に空気を読む。「吾輩は猫である」は、夏目漱石が俗物を風刺した小説である。  中学教師の仲代達矢は、妻(波乃久里子)と三人の子供と共に、雨漏りのする安普請の家に暮らしている。この家に、さして用件もなく訪れる伊丹十三、岡本信人、前田武彦、篠田三郎。俗物たちは...
空白

𠮷田恵輔監督 「空白」 2021 レビュー ネタバレあり

薄い人  世の中には、目立つ人がいる。頭の良い人、仕事の出来る人、異性にモテる人、ルックスのいい人、声の大きい人。しかし、そんな特長のある人ばかりではない。むしろ、目立たず、存在感の薄い人のほうが多い。彼等は、自己主張することなく、ひっそりと生きている。彼等の考えていることは、周囲に伝わらない。攻撃性や嫉妬にも乏しいの...
北野武監督 「その男、凶暴につき」 1989 レビュー ネタバレあり

北野武監督 「その男、凶暴につき」 1989 レビュー ネタバレあり

常識的な感性  北野武は、ごく常識的な感性を持った人だ。往年のオールナイトニッポンのトークを聴くとわかる。たけしは、権力者と市井人、富豪と貧民が混在する社会の「狭間」に産まれる「間抜け」な状態を揶揄して笑いに転化した。漫才やコントでもこの「間抜け」を嗤い、かつ、愛着して表現した。「間抜け」の面白さを巧く表現するには、双...
滝田洋二郎監督 「コミック雑誌なんかいらない」 1986 レビュー ネタバレあり

滝田洋二郎監督 「コミック雑誌なんかいらない」 1986 レビュー ネタバレあり

テレビ全盛期  1980年代、日本のテレビは全盛期を迎えた。報道やバラエティは、半ばリアル、半ばヴァーチャルなメディア空間を創出し、大衆はお手軽なエンタテイメントとしてそれを消費した。「コミック雑誌なんかいらない」には、当時のフジテレビ横澤彪プロデューサーが本人役で出演し、部下たちに訓示する。 「視聴者は、ニュースもバ...
新藤兼人監督 「北斎漫画」 1981 レビュー ネタバレあり

新藤兼人監督 「北斎漫画」 1981 レビュー ネタバレあり

江戸の爛熟  江戸の人口は100万人を超えていた。世界一の大都市だったという説もある。日本はガラパゴス的な発展を遂げ、1700年代後半、化政期には文化の爛熟期を迎えていた。葛飾北斎は1760年に産まれ、1848年に死んだ。その20年後に明治維新が起こったことになる。  「北斎漫画」には、曲亭馬琴(西田敏行)、十返舎一九...

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