シネマ執事

ティッシュみたいだね 映画って

佐々木 隆行
佐々木隆行(ささきたかゆき)

1969年生まれ。広島県出身。青山学院大学中退。IT企業勤務。
最初の映画体験は「東映まんがまつり」。仮面ライダーがヒーローだった。ある年、今回は「東宝チャンピオンまつり」に行こうと一旦は決意したものの、広島宝塚へ歩く途中に建っていた広島東映「東映まんがまつり」の楽し気な看板を裏切ることが出来なかったことを痛切に覚えている。
佐々木 隆行の記事一覧( 3 )
ジャンプ

竹内昌男監督 「ジャンプ」 2004 レビュー

甘美なノスタルジー 別れた女ほど、甘いものはない。こっちが年を重ねても、彼女はあの時のまま、若く美しい。唇や指が、彼女の柔らかい身体の感触をはっきりと覚えている。出会った頃のときめきや、落したときの達成感、時折の小さな諍いや、別離のやるせなさ。ヤレなかった女だって、案外悪くない。終電の時間を気にしてドキドキした、渋谷の...
ビートたけし監督 「みんな~やってるか!」 1995 レビュー ネタバレあり

ビートたけし監督 「みんな~やってるか!」 1995 レビュー ネタバレあり

【世界一くだらない傑作】 くだらない。完璧ににくだらない。シリアスで抽象的な映画を4本撮ったのは、このオチのためだったのか。ショートコントを連打する構成だが、シニカルに辛口のギャグとか、ほっこりとした笑いを誘うユーモアとか、都会的なウィットなど一切ない。ただただ低俗、完全なバカ。 ダンカンがVシネマを観ている。オープン...
夢二

鈴木清順監督 「夢二」 1991 レビュー ネタバレあり

難解な映画ではない  「夢二」はわかりにくい映画ではない、ということがようやくわかった。若いころのほうが、物事を率直に自分の眼で見られないものだ。経験値も低く、マスコミの刷り込みの力も大きい。鈴木清順は、難解な映画を作る監督だと思っていた。「ツィゴイネルワイゼン(1980)」を初めて観て、幽玄な異境に誘われた。その後観...
教祖誕生

天間敏宏監督 「教祖誕生」 1993 レビュー ネタバレあり

1990年代の空気 1990年代前半、私は大学をほぼ放擲し、モラトリアム生活を送っていた。深夜のアルバイトを終え、昼夜逆転の朝日に眩暈しながら、名画座を彷徨った。そんな頃、「教祖誕生」を川口の古い映画館で観た。 1980年代からずっと、日本は躁状態だった。誰もが毎日を充実して楽しんでいなければならず、そうでない奴は、「...
黒沢清監督 「CURE」 1997 レビュー ネタバレあり

黒沢清監督 「CURE」 1997 レビュー ネタバレあり

馴れ合いとなった恐怖  催眠術で殺人を誘導する話なのだから、ホラーというよりは、サスペンススリラーか。殺人教唆を繰り返す犯人と刑事の対決。刑事の妻は精神を病んでおり、奇矯な言動で刑事を疲弊させる。親友の精神医学者も、催眠の罠に陥っていく。  深層心理の不可解、催眠によって崩れる倫理の脆さ。観客は、自分にもこんな状況が訪...
浮草

小津安二郎監督 「浮草」 1959 レビュー ネタバレあり

完璧な絵画  港町は真夏の陽射しに照らされている。水平線で空と海はおおらかに結ばれ、坂道も石垣も家屋も、ゆったりと夏へと開かれている。微風が風鈴を揺らしているが、女も、手にした団扇で艶めかしい風を送る。すべてが碧く揺蕩うなか、赤いポストだけが、けばけばしさを主張する。  美術館に飾られるような絵画ではない。長い歴史を受...
模倣犯

森田芳光監督 「模倣犯」 2002 レビュー ネタバレあり

薄っぺらい巨匠  森田芳光は、薄っぺらい巨匠だった。森田は、世界の薄っぺらさを鋭く描き、その虚構性をエンタテイメント化した。最もこの主題を先鋭化したのが、「模倣犯」だ。しかし、「模倣犯」は、評価されていない。「何がいいたいのか、わけがわからない」「監督の自己満足」などと酷評されている。しかし私は、虚構性を増す世界を、鋭...
しとやかな獣

川島雄三監督 「しとやかな獣」 1962 レビュー ネタバレあり

大映黄金期  1962年。大映の黄金期は爛熟していた。市川崑は、ドライなヒューマニズムを切れ味鋭いカッティングで映像化した。増村保造は、日本的な情緒を忌避し、傍若無人な欲望を礼賛した。市川雷蔵は、伝統演劇の様式美を端正な虚無に変換し、映像の中で妖しく蠢いた。勝新太郎は、豪放磊落な偶像を虚実交えて体現した。  大映だけで...
復活の日

Withコロナ 深作欣二監督が発する深いメッセージ 「復活の日」 1980

あらすじ 殺人ウイルスと核ミサイルの脅威により人類死滅の危機が迫る中、南極基地で生き延びようとする人々のドラマを描いた作品。 「愛は、人類を救えるのか?」MM88、その細菌兵器によって全世界は大パニックとなり、 氷に閉ざされた南極大陸に残された探検隊の863人を除き、45億人の人類が死んでしまった。 滅亡寸前にまで追い...
痴人の愛

増村保造監督 「痴人の愛」 1967 感想

ラブ&セックス  愛とセックスは怖しい。混ぜるな危険、だ。酒やギャンブル以上に依存性が強い。種を残す本能なのだから当然だ。正確にいうと、セックスは本能だが、愛は本能ではない。この二つが掛け合わされたとき、人は至福の悦びを味わう。それだけに失われたときの苦しみも大きい。世の常識人は、若いうちにこの悦びと苦しみを経験して、...

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