シネマ執事

ティッシュみたいだね 映画って

佐々木 隆行
佐々木隆行(ささきたかゆき)

1969年生まれ。広島県出身。青山学院大学中退。IT企業勤務。
最初の映画体験は「東映まんがまつり」。仮面ライダーがヒーローだった。ある年、今回は「東宝チャンピオンまつり」に行こうと一旦は決意したものの、広島宝塚へ歩く途中に建っていた広島東映「東映まんがまつり」の楽し気な看板を裏切ることが出来なかったことを痛切に覚えている。
佐々木 隆行の記事一覧( 4 )
十階のモスキート

崔洋一監督 「十階のモスキート」 1983 感想

ロックンロール 内田裕也こそ、ロックンロールだ。ロックンロールの神髄を完全に体現した唯一無二の存在だ。内田のロックンローラーとしての神髄は、自ら脚本を執筆した映画に刻まれている。「十階のモスキート」は、当時新人だった崔監督との共同脚本による、傑作である。 「ある時ふっと気が付くと、壁にモスキート(蚊)をつぶした小さな血...
御法度

大島渚監督 「御法度」 1999 感想

異才の軽やかな遺作 私が大島渚を知ったのは、「戦場のメリークリスマス(1983)」だった。この作品以降、大島は、映画を撮らない映画監督として「朝まで生テレビ」等のテレビ番組に出演していた。「朝生」の大島は、番組終盤に怒りを爆発させ、反体制/反権力の頑固さを披歴していた。「戦メリ」をテレビで観た後、旧作を何本かヴィデオで...
やくざ絶唱

増村保造監督 「やくざ絶唱」 1970 感想

愛すべきやんちゃ男  主演、勝新太郎。冒頭のシーン。街のチンピラどもを軽く殴り倒した後、愛人へのプレゼントを買い、勝が颯爽と家路へと闊歩する。この3分ほどで、勝新太郎という男が、この映画に君臨することが高らかに宣言される。  要するに、子供だ。やくざ稼業の男だが、組織の権力闘争などには、興味がない。威張り腐って街をのし...
宮本から君へ

真利子哲也監督 「宮本から君へ」 2019 感想

ロックンロール  ロックンロール。ロックではなく、ロックンロールだ。池松壮亮がこんなに素晴らしい俳優になるとは思っていなかった。10代のころから多くの映画に出演し、近年は賞を獲得するなど、評価が高まっていた池松だが、老成しているかのような、曖昧な存在感を纏っていた。しかし、「宮本から君へ」で宮本を演じる池松に、曖昧さな...
鍵

市川崑監督 「鍵」 1959 感想

中村鴈治郎の最高傑作 二代目中村鴈治郎は、上方歌舞伎の名優であり、人間国宝だが、1960年前後の数年間、主に大映で映画にも出演している。この時期は大映の黄金時代であり、勝新太郎、市川雷蔵の二枚看板が覇を競い、市川崑や増村保造が、芸術的野心を鋭く実現させていた。 鴈治郎はこれら大映作品で、古き関西人の軽みと洒脱を体現して...
game

井坂聡監督 「g@me」 2003 感想

ウェルメイド 良い映画には、2種類ある。芸術作品とウェルメイドなエンタテイメントだ。芸術作品には、映画監督の創造の魂が刻まれる。やむにやまれぬ表現欲求を持つ映像作家は、観客を楽しませる前に、自分が救われるために作品を創る。ウェルメイドな映画を撮る監督は、観客のことを第一に考える。特定の映画マニアではなく、一般の観客が楽...
小津安二郎監督 「秋日和」 1960 感想

小津安二郎監督 「秋日和」 1960 感想

甘いコミュニティー 「秋日和」は、3種の人間関係グループの話だ。1つ目、未亡人である原節子と娘の司葉子。仲の良い親子の双方に縁談が持ち上がることで、関係性にさざ波が起こる。2つ目は、佐分利信、中村伸郎、北竜二の古い学友だ。インテリである彼等は、社会的ステイタスの高い立場にいるが、学生気分のままじゃれあっている。3つ目は...
謝罪の王様

水田伸夫監督 「謝罪の王様」 2013 感想

世界初の「謝罪」をテーマにした映画 失言、失敗、失態。やらかしてしまったとき、自身と相手の感情、周囲の空気は複雑に絡み合う。こんがらがった事態を収拾させるには、知恵と体力が必要となる。「謝罪の王様」は、世界初の「謝罪」をテーマにした映画として、「謝罪」する人、「謝罪」される人の機微を巧みに描き出す。 「東京謝罪センター...
黒澤明監督 「天国と地獄」 1963 感想

黒澤明監督 「天国と地獄」 1963 感想

芸術とエンタテイメント 映画は、芸術だ。多くのスタッフやキャストが結集して完成するが、成果物は映画監督個人の芸術作品だ。同時に映画は、血沸き肉躍るエンタテイメントでもある。この両立性こそ、映画の最大の魅力だ。文学は、作家ひとりが執筆することで完結する。作家の芸術的感性は、ほぼ何物にも邪魔されず、ストレートに文章となり、...
夜叉

降旗康男監督 「夜叉」 1985 感想

雪景色と高倉健 高倉健は、いつも吹雪のなかを歩いている。厳しい寒さのなか、黙々と労働する男、それが高倉健だ。「夜叉」の舞台は、若狭湾の小さな漁港である。高倉は漁師だ。妻(いしだあゆみ)と妻の母(乙羽信子)、子供3人を養っている。田中邦衛や丹古母鬼馬二など、漁師仲間からも篤く信頼されている。 福井県美浜町と若狭町にある5...

Other

More
Return Top