シネマ執事

ティッシュみたいだね 映画って

佐々木 隆行
佐々木隆行(ささきたかゆき)

1969年生まれ。広島県出身。青山学院大学中退。IT企業勤務。
最初の映画体験は「東映まんがまつり」。仮面ライダーがヒーローだった。ある年、今回は「東宝チャンピオンまつり」に行こうと一旦は決意したものの、広島宝塚へ歩く途中に建っていた広島東映「東映まんがまつり」の楽し気な看板を裏切ることが出来なかったことを痛切に覚えている。
佐々木 隆行の記事一覧( 5 )
永井 聡監督 「ジャッジ!」 2014 感想

永井 聡監督 「ジャッジ!」 2014 感想

広告という虚業 「美味しいです、買ってください。」広告の目的はそういうことだが、そんな言葉で消費者のこころは動かない。思わず漏れる笑み、爽快感、甘酸っぱい気持ち、暖を取った時のほっこり感、動物の赤ちゃんって可愛い、などなど。消費行動の周辺に寄り添う感情を狙い撃ち、ハートを鷲掴みにしなければいけない。 つまり、虚業だ。実...
鈴木清順監督 「ツィゴイネルワイゼン」 1980 感想

鈴木清順監督 「ツィゴイネルワイゼン」 1980 感想

抽象芸術としての映画 この映画には、ストーリーがない。鈴木清順が嗜好する風景や、言葉の断片を、幾重にも折り重ねているだけだ。私は高校生のとき初めて「ツィゴイネルワイゼン」を観て、驚いた。子供のころ、映画やドラマは「お話」だと思っていた。魅力的な主人公が颯爽と活躍したり、懊悩したりする。家族や恋人との関係は大きな歓びを産...
佐藤 純彌監督 「君よ憤怒の河を渉れ」 1976 感想

佐藤 純彌監督 「君よ憤怒の河を渉れ」 1976 感想

ヒーローとしての高倉健 高倉健こそが、ヒーローだ。男の中の男だ。東映退社後第一作「君よ憤怒の河を渉れ」は、1976年、高倉健45歳の作品である。 高倉は、検事を演じる。東映時代、主にヤクザを演じてきた高倉だが、知的エリートの颯爽とした背広姿もサマになっている。高倉検事は、ある日、強盗傷害の容疑で逮捕される。全く身に覚え...
黒沢清監督 「旅のおわり世界のはじまり」 2019 感想

黒沢清監督 「旅のおわり世界のはじまり」 2019 感想

トップアイドルとしての前田敦子 前田敦子は、美人ではない。トップアイドルなのに美人ではないのだ。結婚して子供もいるので、もうアイドルは卒業している、と思う人もいるだろう。女優への転身に成功していると。しかし、AKB48の中心メンバーだった時代も、決して美人ではなかった。少女の頃から美貌ではなかったし、大人の色香が出てく...
市川崑監督 「破戒」 1962 感想

市川崑監督 「破戒」 1962 感想

カミングアウトへの戒め 「戒め」は、部落民であることをカミングアウトするな、という掟だ。「破戒」とは、この戒めを破ること。小学校の教師である市川雷蔵は、教室で生徒に向かって「破戒」する。清廉なこころを持つ雷蔵のカミングアウトは、生徒や教師、周囲の人々のこころを動かし、差別の愚かさを皆が認識する。 部落差別は人種差別と違...
クリーピー 偽りの隣人

黒沢 清監督 「クリーピー 偽りの隣人」 2016 感想 ネタバレあり

サスペンスと人間心理 奇怪な連続殺人。犯罪心理学者の刑事時代の過ち。転居先の怪しい隣人。被害者遺族の可憐な少女。米国のサスペンススリラーのような道具立てだ。巨匠、東野圭吾もそうだが、この映画の原作者である前川裕も、米国のスリラー小説や映画をたっぷり吸収しているのだろう。前川は、比較文学を専門とする法政大学教授でもある。...
セックスチェック第二の性

増村保造監督 「セックスチェック 第二の性」 1968 感想

女性の証明 「セックスチェック」とは、スポーツの女子競技にエントリーするための、「女性証明」だ。いくつかのスポーツ競技は、男子競技と女子競技に分けて実施される。これは、男性のほうが運動能力が高いことが前提となっている。個人の記録が数値にて測定される陸上競技や水泳では、男性のほうが高い水準を示すのが周知の事実だ。 しかし...
シン・ゴジラ

樋口真嗣監督 「シン・ゴジラ」 2016 感想

国難へ立ち向かうリアリズム 日本人は、2種類に分かれる。日本国が好きな人と、嫌いな人だ。私はこの映画を観て、更に日本が好きになった。 「シン・ゴジラ」は、ゴジラの上陸という国難に立ち向かう人々を描いている。昭和のゴジラシリーズで主人公を務めたのは、科学者やジャーナリストだった。若きジャーナリストは、真相を掴むために奔走...
探偵物語

根岸吉太郎監督 「探偵物語」 1983 感想

80年代が本格化した年 1980年代とは、どういう時代だったのか。80年代末に冷戦が終了したり、昭和天皇が崩御したのは偶然ではない。加速度的に進化した文明は、1989年をピークに緩やかな下降期に入ったのだ。1980年代こそ、人類文明の絶頂期だった。21世紀の人間は過去のインフラをたっぷり享受するだけで、もう変革や向上は...
私は二歳

市川崑監督 「私は二歳」 1962 感想

戦後社会という桃源郷 愛国心や伝統を尊ぶこころは、敵を憎悪するこころも培かってしまう。挨拶をしない人に薄っすら敵意を抱くがごとく。大航海時代以降の世界では、異民族の衝突が多発し、戦争の規模は劇的に拡大した。 日本も史上最大の戦争を闘い、史上最大の敗北を喫した。国民精神は致命的な打撃を受けたが、すぐさま復興に向けて立ち上...

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