原作:奥浩哉
ネタバレ度:★★★☆☆
概要
通り魔から人を助けようとした加藤勝は、無念にも返り討ちに遭ってしまう。
しかし目覚めると、そこは何の変哲もないマンションの一室だった。
謎の巨大な黒い玉と、同じように死んだはずの人々がいる事を除いて……
そこから送り込まれたのは、妖怪軍団が蔓延る大阪の戦場だった!
超リアルフルCGによるSFアクション。
時代がついにGANTZに追い付いた!
実写版? あれはあれで面白いぞ!
ザ・王道
本作の主人公は、玄野ではなく加藤です。
正確に言えば、玄野が死んでいる間、加藤が主役を張っていた大阪編のリメイクとなっています。
本作ではガンツ初参戦のはずなのですが、なんかやたら強いです。
武装に恵まれたとはいえ、ここまでできる子だったかなと原作読み直してみたら、どうやら他のカットされた強キャラ達の戦闘シーンが統合されているようです。
さすがに当て身で妖怪即死させたり、超能力で破裂させたりはしていませんでしたが。
でも加藤だから不自然さを感じないのは、さすがの人徳です。
元々『理想の高校生』として描いたという加藤は原作者奥浩哉が1番好きなキャラクターらしいので、作者冥利に尽きるとはこのことですね。
偽善者呼ばわりされることよりも正義感扱いされる方にムッとしているのに、ナチュラルボーン・ヒーロー感があります。
あと弟がなぜかちょっと素直じゃないツンツンしたキャラになっており、にーちゃんにーちゃんと泣きべそかいてばかりだった原作より、健気でかわゆくなっています。
こんな弟いたら生き残りたくなるわ……!
あと山咲さんめっちゃカワイイ。
正統派ヒーローの加藤にお似合いの、正統派ヒロインっぷりです。
しかも高校生に頼りまくってた原作より、ちょっと大人ぶったお姉さんキャラにしているのがグッドです。
ひたすら面倒臭くて玄野の中二病を悪化させた岸本(原作序盤のヒロイン)とは大違いです。
原作では終盤まで報われない結末となってしまうのですが、一時的とはいえハリウッドみたいな王道展開になるのが、実に加藤くんらしくて最高でした。
プライベートではエロ漫画家やってますけどね彼女。
あんだけロマンスしたなら、再会した時の夜は熱いぞっ!
葬り去られた黒歴史
一応、メイン主人公の玄野も少しだけ出てきます。しかしそれはヒーロー覚醒した後の姿。
あの中二病こじらせまくってた玄野くんが、『いなくなってしまった英雄』的なただのイケメンとして描かれていたのがちょっとイラッとしました。誰だよお前。
なんか背も伸びてるし。
チンピラにパシられたり、同棲してたヒロイン(岸本)に全く相手にされなかったり、出会って数分の美女にセックス懇願したりしてた真っ黒に輝く彼の青春を返して欲しいものです。
あとなんか公式サイトのトップ画像では、加藤の脳天を刀でかち割ろうとしているように見えるのが暗い怨念を感じてシュールです。
みんな大好き西くんも登場。
原作でも実写版でも、イキりまくっては最終的にダサいことになってる彼ですが、本作では最後まで切れたナイフとしてヘタレませんでした。
こいつ一人だけFFやってやがる。
原作ではマザコン設定なんてのまであるんですけどね。
なんか実写映画版でも純然たるイケメンヒールとしてカットされてましたよ。ケッ(ツバを吐きながら)。
玄野くんと同じく、中二病患者の黒歴史がメディアミックスではことごとく剥奪されていく……
やはり2人は似た者同士。
原作終盤、彼らが対決することになったのは運命と言えるでしょう。
そっちはすごく西くんらしい終わり方だったので、本作で鼻白みした方はそれを読んでスッキリしといてください。
チビッコも安心の再構成
これはヒーローものです。
原作では毎度ギスギスするプレイヤーたちの様子を見るのも楽しみの1つでしたが、本作はとても心臓に優しい仕様になっています。
原作連載当時は猟奇殺人や少年の無軌道な犯罪が世間を賑わし、社会に暗い影を落としていた時代です。
原作でも、特にこの大阪編では他人に異様に無関心な2ちゃんマインドな人間たちや、過激な殺人・性犯罪描写が目立ちました。
正直言って有害図書指定されててもおかしくない内容なのですが、そんな中、自らの命を顧みず他人を助けるために奔走する加藤は、正統派ヒーローキャラとして輝いていました。
また、生死が賭かっているのに不自然なほど緊張感がなかったり、話のテンポがやたらスローモーだったりした面も、ブラッシュアップされているのが好感度高いです。
あの加藤くんですら、けっこう土壇場までウジウジ理想論にこだわってましたからね。
クズとめんどくせー奴ばっかりの原作と比べ、実にシンプルかつスピーディー。
また、原作にて『制限時間が過ぎれば帰還できる』『宇宙人や自分たちは一般人には見えない』という基本ルールが変更された後のエピソードのため、敵側も最初からバンバン一般人を殺しまくってきます。
ガンツのプレイヤー達も『謎の黒スーツ集団』として都市伝説のような扱いになっており、宇宙人との戦闘の様子もチラホラ報道されている状態でした。
警察とか自衛隊何やってんだ。
見えない大仏の重みで地面が陥没し、一般人が逃げていったような平和な序盤が懐かしいですね。
おかげで素直に地球防衛軍になっているので、感情移入はしやすいでしょう。
大阪編は共闘するチームのガラの悪さが最悪で、レイプ魔と戦闘狂ばかりだったのですが、だいぶマイルドになってました。
ストリートギャングがEXILEぐらいになった丸さです。
また、強キャラ連中の中の人たちは、なんとレイザーラモンコンビやケンドウコバヤシなどの芸人さんたちです。
しかも全く違和感なく声優やれてるのが凄い。俳優とはいったい……
そんな意外性も含めて、見事に誰でも楽しめるエンターテイメントとしてリメイクされています。
PG12だけどね! 良い子のみんなは大人と一緒に観よう!
CGめっちゃやべぇ(語彙力)
公式でも『いよいよ時代が奥浩哉のGANTZに追い付いた!』などと言うだけあって、その映像美は凄まじいの一言。
8年前の『バイオハザード・ダムネーション』などと比べて、プレステ2から一気にプレステ4になった感じです。
手持ちゲーム機がXbox360で止まっている筆者には、毛穴や小じわまで表現する変態的な技術力には脱帽するしかありません。
特に乳揺れのエロさに至っては現実すら超越していました。
さすが乳揺れに世界一執念を燃やす国。
モーションキャプチャーによる制作もどえらい苦労だったことでしょう。
ラスボスぬらりひょんに総攻撃を仕掛けるクライマックスのカッコよさは必見。
そこだけ10回くらい観ました。
その反面、ガンツの声が棒読みちゃん(通称ゆっくりボイス)という機械音声なのには、露骨な制作費の削減を感じて爆笑しました。
でもやたら合ってるから不思議なのはさすがGANTZ。シュールを極めているぜ。
放映当時はVRアトラクションなどの特別展示が開催されていたそうです。
いつの間にやら、自宅や遊興施設で気軽にVR空間を楽しめるようになっていました。
誰でもかめはめ波を撃ったり光学迷彩を体験できる時代です。
今こそ、再びカプコンやナムコには頑張って欲しいものです。
黒いバイザーを付けたプレイヤー達が、仮想空間で宇宙人と『ギョーンギョーン』とか変な銃を撃ちながら戦うゲーム……
是非とも実現していただきたい。
そんなシュールな光景が、日本中で垣間見られるチャンスなのですから。
まさに時代がGANTZに追いついたのです。
もっとワクワクさせてくだちい。
LEAVE A REPLY